誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「えっ……なんで……」
慌てて店の戸に向かい、鍵を開けると、
「小春ちゃん!」
と、男が店の中に飛び込んで来た。
Vネックのセーターに、ジーンズ、レザースニーカーという姿の閑は、髪はボサボサだが、そのラフな雰囲気が、甘い顔だちによく似合っている。
一瞬、スーツじゃなくても素敵だなぁと思いかけたが、それどころではない。
「かっ……神尾さんっ……?」
まさか閑が、朝一番で店にやってくるとは思わなかった小春は、硬直してしまった。
「小春ちゃん、話があるんだけど」
一方、どこか感情を押し殺したような様子の閑は、それでも熱っぽいコハク色の瞳で、じっと小春を見つめる。
「話って……えっと……」
当然、昨晩のことに決まっているのだが、ここで出来る話でもない。
とりあえず後でと言うべきか、それとも彼を連れて店を出るか、だがどこで話をしたらいいのかと、考えていると、
「おっ……なんだプリンス、朝一番から血相変えてよ~」
カウンターの中から、この場で唯一能天気な雰囲気で、大将がワハハと笑いながら手招きする。
「せっかくだ。朝飯食って行けよ」
「えっ……?」
小春は目を丸くして、カウンターを振り返ったが、閑は一瞬口ごもり、それから、
「ご馳走になります」
と、頭を下げた。