誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
閑は朝からたくさん食べた。ランチに来るときは普通に一人前しか食べないし、昨晩はビールがメインでおでんはつまみだったので、気づかなかったが、どうやら閑はかなりの大食漢らしい。
だが育ちがいいせいか、箸を持つ姿が美しいので、実にさわやかだ。
「朝からもりもり食うなぁ~!」
すでに食事を終えた大将が、楽しそうに、アッハッハと笑いながら、小春が淹れたお茶を飲んでいる。四人掛けのテーブルの上には、白いごはんと焼いたサバ、大根の味噌汁におつけものというメニューが並んでいる。
小春は中本の隣で、テーブルをはさんだ目の前に座る閑を、お味噌汁を飲みながら、ちらりと見つめた。
「すみません、美味しくて」
そう答える閑からは、店に来たばかりの、どこか張りつめたような空気は消えていた。いつものようなニコッと優しい笑顔に、小春はホッとしたものを感じていた。
「朝から機嫌よくメシを食えるヤツに悪い奴はいねぇ。よし、小春ちゃん、あと片付けはまかせたぜ~」
大将は椅子から立ち上がって、そのまま食堂の戸から出て行こうと背中を向ける。
「えっ、おじさん、どこに行くのっ!?」
「商店街の寄合~」
「こんな時間に!? あっ、おじさんっ……」