明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
私は焦り、目を右往左往させる。


「お金があるのは父と母ですから。私は自分で稼いでいるわけではありませんので、与えられるものに感謝し、つつましさを忘れるべきではないと思っておりまして……」

「なんとしっかりしたお嬢さんなんだ」
「い、いえっ……」


とっさの発言に食いつかれてしまって、嫌な汗が出る。

けれども、口にしたことは嘘ではない。
一橋家が華族ともてはやされても、それは所詮家柄の話であり、自分の努力の結果ではない。

日々食事ができて着る物を与えられていることも然り。

私自身が働いて得た対価で購入したものではないので、当然だと思うべきではないと思っている。


ただし、私は最低限の生活が保障されていることについて感謝しているのであって、おそらくこの身なりの整った紳士が考えているような次元ではない。


「あなたの言う通りだ。俺も商売をしていてそれなりに稼がせてもらっているけど、従業員の頑張りがあって初めて成り立っている。そうしたことに感謝し、おごり高ぶることなく足が地についた生き方をしたい」
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