明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「足りないかい?」
「な、なにをおっしゃっているんですか? いただきすぎです」


社会の仕組みについてあれこれは知らないが、尋常小学校の一年目の先生の月給が八圓だと聞いていたので、このお札が価値あるものだということだけはわかる。


「汚したのは俺だ。いいから取っておきなさい。余ったら好きなことに使えばいい」

「お金があっても、使い方がわかりません!」


動転してしまっている私は大きな声を張り上げてしまった。

そもそも、買い物に行くのは家の物をそろえるときだけ。

好きな物を買ってもいいと言われたことがなく、なにを買ったらいいのか見当もつかない。

すると紳士のほうが目を丸くして、しばらくしたのちクククと笑みを漏らし始めた。


「女学校に行っているのだから、それなりの家柄のお嬢さんだと思ったんだけど違うのかな?」
「あっ!」


しまった。今は初子さんのフリをしておかなくちゃいけなかったのに。
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