明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
その夜。行基さんは十九時すぎに帰ってきた。


「おかえりなさいませ。昨日は……本当に申し訳ありませんでした」


玄関で正座をし、深く頭を下げる。
私にはあの無礼な発言の謝罪をすることしかできない。


「あや、頭を上げて。信明から聞いたよ。俺もなにも聞かずに怒ったりして悪かった。冷静に考えればおかしな話なのにな」


まさか、彼が謝罪の言葉を口にするなんて。
知らなかったとはいえ、完全に私の失態なのに。


「いえ、私が悪いんです。追い出されても文句は言えません」


ずっと頭を下げ続けていると、彼は玄関を上がってきて私の横でしゃがみこんだ。


「追い出すわけがないだろう。あやは俺の妻じゃないのか?」


そして、そんな優しい言葉をかけてくれるので、鼻の奥がツーンとしてくる。


「いえ。あれっ……はい?」


どっちの返事が正しいのか混乱すると、彼はクスッと笑みを漏らす。
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