明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

「とんでもございません。野村さまの奥さまが、女学校で“絶世の美女”と噂されていらっしゃったとお聞きしました。たくさんの男性が求婚された中、野村さまの魅力が奥さまのお心を動かしたと」


実は一ノ瀬さんに野村さまについての資料も用意してもらった。
そしてそれを必死に読み込んできた。


使われている漢字が難しく辞典を参考にしながらの作業だったのでなかなか骨は折れたものの、用意してもらった書類すべてに目を通してある。


「そんなことまで知っているのか？」


野村さまが感心しているだけでなく、行基さんも目を丸くしている。


「そんな素敵な野村さまにお会いできると知り、少し緊張しておりましたが、お優しく話しかけてくださり、感無量です」


うまく話せているだろうか……。
学がないことがバレては困ると、必死に頭を回転させる。


「それはそれは、私も光栄だよ」
「ありがとうございます。本日はささやかですが、お子さまに贈り物が」