明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
私がそう口にすると、一ノ瀬さんがタイミングよく風呂敷を差し出してくれる。
「お子さま用の着物でございます。お気に召しますとうれしいのですが……」
奥さまが着物好きで六歳になる女児がいることを知り、急遽津田家がひいきにしている呉服店を貞から聞き出し、一番よい品を用意してもらったのだ。
「これはうれしい。妻は子供を着せ替え人形のようにしていてね。新しい着物をといつもせがまれるのだよ。ありがたく頂戴しよう」
野村さまのお付きの人に風呂敷を差し出すと、すぐに解いて中を確認している。
「帯も結構な品だ。妻も子も気に入るだろう」
満面の笑みを浮かべる野村さまに頭を下げ、うしろに下がった。
ここから先は行基さんや一ノ瀬さんが仕事の話をするはずだ。
しばらくの間、私にはさっぱり理解できない関税の話や、今後の紡績業の見通しについてなど、とてつもなく規模の大きな話をしているのを聞きながら、呆気に取られていた。
「お子さま用の着物でございます。お気に召しますとうれしいのですが……」
奥さまが着物好きで六歳になる女児がいることを知り、急遽津田家がひいきにしている呉服店を貞から聞き出し、一番よい品を用意してもらったのだ。
「これはうれしい。妻は子供を着せ替え人形のようにしていてね。新しい着物をといつもせがまれるのだよ。ありがたく頂戴しよう」
野村さまのお付きの人に風呂敷を差し出すと、すぐに解いて中を確認している。
「帯も結構な品だ。妻も子も気に入るだろう」
満面の笑みを浮かべる野村さまに頭を下げ、うしろに下がった。
ここから先は行基さんや一ノ瀬さんが仕事の話をするはずだ。
しばらくの間、私にはさっぱり理解できない関税の話や、今後の紡績業の見通しについてなど、とてつもなく規模の大きな話をしているのを聞きながら、呆気に取られていた。