明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「これは時々ねじを巻いてやらないといけない。そうでないと使い物にならなくなるから気をつけて」


紳士は私に無理やり時計を押し付けた。


「ですが……」


これはいったいいくらするんだろう。
懐中時計など身に付けたこともないので、見当がつかない。


「きみはさっきから俺の申し出を拒否してばかりで、少々失礼だ。受け取りなさい」


ビシッと叱られた私は、小さくなって時計をギュッと握った。

怒っているのかと思いきや、彼はニコッと笑みを浮かべてなぜか私に熱い視線を送ってくる。


「ほら、もう着くぞ」
「はい。ありがとうございました」


神明神社の近くで人力車を降り、深々と頭を下げる。


「うん」
「それと……一生大切にします」


私は懐中時計を握りしめ言う。
すると彼は優しい笑みを浮かべ口を開いた。


「きみは珍しいくらい奥ゆかしいご令嬢なんだね。こんな安物いらないと言われるかと思ったよ」
「まさか……」
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