明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
そういえば、前にも『鳥のよう』と言われたような。


「飛んでなどいきません。私はここにしか居場所がないんです」


思わず本音が出てしまった。

もう一橋の家には帰りたくない。

女中の仕事が嫌だったわけではないし、初子さんや孝義との生活は楽しかった。
でも、やはり私のいるべき場所ではなかった。

私の顔を見るたびに不機嫌になる母をも不幸にしていた気がするのだ。


「あや……。お前の居場所は俺が守ろう。だから、もう不安に思わなくていい」
「行基さん……」


たとえ行基さんに想い人がいたとしても、私は彼のそばから離れられない。

だって、これほどまでに優しくしてもらえて、そして大切にされ……幸せで満たされているからだ。

彼は左手を私のお腹のあたりに回したかと思うとグイッと抱き上げ、なぜか胡坐をかいている膝の上に乗せる。


「えっ……」


彼の厚い胸板が嫌でも視界に入ってしまい、あたふたしてしまう。
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