明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
藤原さんに『副社長の人生を滅茶苦茶になさるのだけはおやめください』なんて言われて落ち込んでいたけれど、安心した。


「襲われたあの日。混濁した意識の中で、誰かが何度も俺の名を呼んでくれていた気がしたが、あれはあやなんだろう?」
「はい」


うなずくと彼は私の頬に手を伸ばし、そっと触れてくる。


「目覚めたとき、お前がいてくれて……生きてお前を抱きしめられて、どれだけうれしかったか」


彼が切なげな声で囁くので、胸がいっぱいになる。


「あやのおかげでこちらに踏みとどまれた。あやにもう一度会いたいと強く思ったんだ。お前を娶る前なら、生きることをあきらめていたかもしれない」


彼の言葉に背筋が凍る。
たしかにお医者さまも、なかなか目を覚まさない彼を前に渋い顔をしていた。


「そんなの、私が許しません。絶対に、許しません!」


語気を強めて言うと、彼はククッと笑う。


「あやの怖いお叱りを受けたくないから、これは必死に頑張らねば」
< 191 / 332 >

この作品をシェア

pagetop