明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

「そのふてぶてしい態度。あの女そっくりね。あなたは初子と同等の立場ではないの。身の程をわきまえなさい。今後、初子にたてついたら追い出してやるわ」


今日は母の虫の居所が悪いようだ。

それもおそらく、父が母の欲しがっていた着物を買わずに、他で散財してきてしまったからだろう。


「同等の立場ではないとは、どういうことですか？　初子さんは姉ですから、もちろん違いますけど」


姉に譲れと言われているのだとばかり思っていたが、『あの女』とはどういうことなのか、私には見当もつかない。


「妾の子ってことよ。芸妓の血を引くなんて、一橋家の穢れなの！」
「奥さま、どうかそれ以上は。あやさまはまだ九歳でいらっしゃいます」


まつがとっさに私を庇ってくれたものの、母の怒りは収まらない。


「まつ、あなた暇が欲しいの？」
「……いえ」


凄まれ意気消沈したまつは、うつむいてしまった。


「妾……」