明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
そんなことは初耳だった私は、呆然としてなにも言えない。

すると母は、怒りの形相のまま部屋を出ていってしまった。


「私……お母さまの子じゃないってこと?」


ポツリと漏らすとまつは顔をそむける。
つまりは、嘘でないということだろう。


「あや、お団子食べていいわよ」


初子さんは気遣ったのか、団子の乗った皿を私に持たせた。


「ううん。これは初子さんのお団子よ。私は、初子さんとは違うんだって」


冷静に言葉を紡ぐと、初子さんは顔をしかめている。

でも不思議と怒りや悲しみという感情が湧き出てくることはなかった。

それどころか、今までのもやもやがストンと晴れた気がして、妙にすがすがしい気分なのだ。


そっか。生き方がそもそも間違っていたのね。
幼いながらも私は、そう感じていた。


母は、ずっと私には冷たかった。

食事の作法を初子さんが間違えても、言葉で注意されるだけ。けれども私には容赦なく手が飛んだ。

ときには、箸をうっかり落としただけで顔が腫れるほど叩かれた。
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