明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「あやさん。いるんでしょ?」
「えっ、はい……」
障子の向こうが茜色に染まりかけてきた頃、一ノ瀬さんの声がしてようやく我に返った。
「こんにちは。女中が部屋から出てこないと心配していましたよ。どうかしましたか?」
「いえ。すみません……」
彼は部屋に入ってくると、数冊の経済に関する本を差し出してくる。
追加で頼んであったのを忘れていた。
「こんな本、読んでいてもつまらないでしょう? 俺や行基さんだって難しい。あやさんは、恋愛小説を読んでいればいいんですよ」
「行基さんのお役に立ちたくて」
「もう十分じゃないですか。あやさんが嫁に来られてから、行基さんは生き生きしている。仕事も絶好調です。でも最近は浮かない顔をしていて、時々俺の話も聞いていない」
そうなの?
旦那さまの変調に気づかないなんて、やはり妻失格だ。
呆然として一ノ瀬さんに視線を合わせると、彼は「ふぅ」と小さなため息をついた。
「えっ、はい……」
障子の向こうが茜色に染まりかけてきた頃、一ノ瀬さんの声がしてようやく我に返った。
「こんにちは。女中が部屋から出てこないと心配していましたよ。どうかしましたか?」
「いえ。すみません……」
彼は部屋に入ってくると、数冊の経済に関する本を差し出してくる。
追加で頼んであったのを忘れていた。
「こんな本、読んでいてもつまらないでしょう? 俺や行基さんだって難しい。あやさんは、恋愛小説を読んでいればいいんですよ」
「行基さんのお役に立ちたくて」
「もう十分じゃないですか。あやさんが嫁に来られてから、行基さんは生き生きしている。仕事も絶好調です。でも最近は浮かない顔をしていて、時々俺の話も聞いていない」
そうなの?
旦那さまの変調に気づかないなんて、やはり妻失格だ。
呆然として一ノ瀬さんに視線を合わせると、彼は「ふぅ」と小さなため息をついた。