明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「それに、どう振る舞うかなんて考えなくても大丈夫ですよ。あやさんらしくが一番なんじゃないでしょうか。そりゃあ、津田紡績の社長夫人となれば、注目されることもあるでしょうし、それなりの品格も求められます。でも、あのパーティのときのあやさんはとても立派でしたし、行基さんだって鼻が高かったはずです」


そうなのだろうか。

私にもっと教養があって、にじみ出てくるような品位があれば……と、どうしても思ってしまう。

そう、章子さんのように。


だめだ。章子さんのことを意識するのではなく、自分が頑張るしかないと気持ちを戒めたばかりなのに、どうしても彼女の顔がチラついて比べてしまう。

行基さんはありのままの私でいいと言ってくれるのに。


それに、藤原さんの発言が私に追い打ちをかけてくるのだ。
章子さんに妻の座を譲れば、行基さんは幸せなのかもしれないと。


「そう、でしょうか……」
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