明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「あやさんは気づいていないかもしれないですけど、行基さんは結婚してから人当たりがよくなったんですよ。それまでは周りに人を寄せつけないような雰囲気があったんです」


そうなの? 
初めて会ったあの日も、すこぶる話しやすかったけど。


「それはおそらく、津田紡績を引っ張る立場の人間として毅然としていなければという心のあらわれだったんだと思います。ですがどこか近寄りがたくて、幹部もいろいろなことに口を挟めないでいました」


なるほど。会社での姿は違ったということか。


「それが、結婚してからは、他の者の意見に耳を傾けるようになり、その結果業績がさらに好転。皆、あやさんの影響だって噂してますよ」
「私の?」


なにもしていないのに?


「でも、それは間違いじゃないと俺も思います。おふたりが話をしているのを見ていると、行基さんはいつも笑顔であやさんの話に相槌を打っていて、それが楽しくてたまらないというふうに見える。それに、あやさんの話を聞いていると世界が広がると常々漏らしているんです。おそらく、行基さんは他人の話を聞く楽しさを知ったんだろうなと」
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