明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「あやさんは、俺たちの尊敬する行基さんの命の恩人です」


そんなふうに言ってもらえると、感激のあまり視界がにじんできてしまう。


藤原さんと話をして、私がいたせいで暴漢から逃げられなかったのかもしれないと、ずっと思ってきた。

だけど、自分が行基さんの命をつないだと言われると、少しだけ肩の荷を下ろすことができる。

行基さんの役に立てたなら、こんなにうれしいことはない。


「あやさん?」


泣きそうになりうつむいていると、心配げに一ノ瀬さんが声をかけてくれる。


「でも、私……」


本当にこのまま行基さんの妻でいてもいいのだろうか。

藤原さんが言った通り、行基さんは今更私を放り出したりする人ではない。

その優しさに甘え、いつか後悔するようなことが起こってしまったら、なんと謝罪すればいいの?


もしも社会的地位を得るために、なりふり構わず妾腹の娘を娶ったという噂が広まりでもしたら、行基さんがうしろ指をさされるかもしれない。
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