明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
それを知った彼を慕う人たちが離れていかないとも言い切れない。

これほどまでに努力を積み重ねてきたのにだ。


行基さんは一橋の母の実子ではないとわかったあとでも、私を拒否したりしなかった。

父は子爵で間違いないのだから、嘘をつかれたわけではないと許してくれた。

けれどもそれは彼が優しいからであって、社会の人たちが皆、同じように思うわけではない。



私は、行基さんをだまして妻の座に収まろうと思ったわけではない。

彼のことを密かにお慕いしていたので、婚姻の話が持ち上がったとき飛びついた。

そのときは妾の子であることが、これほどまでに問題になるとは思ってもいなかったのだ。


父の代くらいまでは、お妾さんも戸籍に登記されていたようだし、政府要人にも妾腹の子はたくさんいると聞く。

一橋の母が私を初子さんや孝義と並べて育てることが気にくわなくて、女中として育ってきただけだと思っていたので、対外的には問題ないものだと。
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