明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
彼は私の背中に回した手に力を込める。


「あやのきらきらした笑顔が見られなくなり、俺は自分が思っている以上に動揺していたようだ。信明から仕事に集中できてないと初めて注意された」


一ノ瀬さんに?
仕事には厳しい人だと聞いていたのに、そんなことがあったんだ。


「ごめんなさい。私が心配をおかけしたからですね」

「旦那が妻の心配をするのは当たり前だ。俺は仕事ばかりしてきたせいか、こんなときにどうしてやったらいいのかわからなくて、お前の不安を解決することができなかった」


彼は手の力を緩め、私の顔を覗き込む。


「すまない。きちんと話を聞いてやるべきだった。信明に笑われたよ。仕事はどんな難題でも解決の糸口をすぐに見つけるくせに、あやのことになると、からっきしだめ男になるんだなって」

「そんなことは、ありません!」


断じてない。私にはもったいないほどの旦那さまだ。
だからこそ、思い悩んでいるというのに。
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