明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
もしこの子が本当に行基さんの子だったとしたら……お腹の子の立場は?

自分が妾腹の子であったので、子供のことを考えてしまう。


初子さんは優しくしてくれたけど、やはり彼女と私の扱いには雲泥の差があった。

女中として働き始めたころ、買い物に行く度に『妾の子なんだってね、かわいそうに』と陰口を叩かれもしたし、一橋の母には何度も『汚らわしい』と折檻された。


それでも楽しいことを見つけて明るく生きてはきたけれど、つらくなかったわけじゃない。

正妻の子なら、初子さんのように女学校に行けたかもしれないと思ったことも、正直ある。

だからあきらめていた海老茶袴をはけて、飛び上がるほどうれしかったのだ。


あんな思いを、その子にもさせるの?

ううん。行基さんは一橋の父とは違う。
この子のことを大切に育てるかもしれない。

そうしたら……私は、なに? 
正妻ではあっても、完全に邪魔者だ。

どちらにしても、受け入れられる状況ではない。
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