明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「あやのそういう前向きなところ、好きだけど……」
「ありがとう。私も初子さんのこと好きよ」


私は彼女に笑ってみせてから、仕事を続けた。


食事を運び終えたあと、その大広間ではなく女中と一緒に朝食を食べた。

それに父も気づいたが、なにも言うことはない。
元来、家族というものに関心が薄い人なのだ。


「いってまいります」


初子さんと孝義とともに学校に向かう私は、いつもと変わることなく笑えていた。

昨日の母のひと言はたしかに悲しかったけれど、ずっと叩かれ続けてきたわけがわかり、胸につっかえていた物が取れすっきりもしたのだ。

高等小学校に通う初子さんは途中でお別れ。

私は孝義の手を引きながら、話しかける。


「孝義。これからは初子さんを頼るのよ」
「どうして?」


まだあどけなさの残る孝義は、なにかと世話を焼く私のことが好きらしく、べったりだ。

すごくかわいいけれど、彼のためを思えば、今後は初子さんに世話を頼んだほうがいい。
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