明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
あのとき、雇ってもらえなければどうなっていたのかわからない。


「どうしても気持ちは変わらない?」
「はい」
「そう、か……。それならひとつだけ約束してほしい」


なんだろう。
首を傾げると彼は続ける。


「どうにもならなくなったら、俺を頼って。父親になりたいなんてもう言わない。でも、縁あってかかわった人だ。幸せじゃないと俺が困るから」


その優しい言葉に我慢していた涙があふれてくる。


「角田さん……ありがとう、ございます。本当に——」


顔を手で覆って泣いていると、彼が肩をポンと叩く。


「一橋さんは笑顔じゃなくちゃ。この店も、一橋さんのおかげで随分繁盛するようになったし、一橋さんの幸せくらい見届けさせてよ」
「……はい」


私は手で涙を拭い笑った。
いつまでも泣いていては、幸せなんてやってこない。

それに、彼に見せる最後の顔は笑顔がいい。


「それでは。行きます」
「もう何日か休んでからにしたら?」
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