明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
ありがたいけど、決心が鈍る。
他人の優しさを覚えると弱くなる。


「いえ」


首を振ると彼はあきらめたのか、小さく頷く。

荷物をまとめ一階に下りると、角田さんが待ち構えていた。


「これ、持っていって」


そして私に二十圓も握らせる。


「いえっ、いただけません」
「まだお給料払ってないでしょ?」


そうは言っても多すぎる。
家賃も食費も払っていないのに。


「こんなには……」
「それじゃあ、十圓がお給料。五圓はお腹の子の祝い。あとの五圓は……楽しかったお礼」
「角田さん……」


私はなんて幸せなんだろう。胸がいっぱいだ。


「だってさ、一橋さんに出会えなかったら、俺、奥さんと離縁したことを後悔して今でもくよくよしていたと思うよ。でも、また人を好きなれるんだってわかったし、笑顔でいれば運が向いてきそうだって気づいたんだ」


彼はそう言いながらクシャッと笑う。

そうかもしれない。
どんなときでも笑顔を忘れずにいたら、運が開けてきた気がする。
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