明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
行基さんは私から離れ、深く頭を下げる。

けれども、彼にそんなことをしてもらう理由がない。

私が章子さんの嘘を見破れず、行基さんを疑ってしまったのが原因なのだから。

私は首を振り、彼に自分からしがみついた。


こんなこと、普通なら恥ずかしくてできない。

だけど、今は彼から片時も離れたくない。
彼の温もりを肌で感じていたい。


「謝って済むことじゃないのはわかっている。どれだけお前が悩んだか……。お前を守ると決めたのに、俺は傷つけてばかりだ。情けない」


私の背中に回った彼の手に力がこもる。

行基さんがついた嘘ではないのに、『情けない』とまで言ってくれる。


「ただ、これだけは信じてほしい。あやを妻にすると決めたときから、一生お前だけを大切にすると心に誓っていた。あやにひと目会った瞬間から、俺はずっとお前に恋をしているんだ」


『ひと目会った瞬間』って……初子さんのお見合いのときのこと?

そっと彼の顔を見上げると、彼は優しく微笑む。
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