明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「海老茶袴をはいていたお前に会ったときからな」
「えっ!」


まさか、気づいていたの?


「な、なにを言って……。私は女学校には行っておりません」

「もういいじゃないか。どうせ初子さんの逢引の片棒を担いでいたから、言えなかったんだろう?」


あぁ、そこまでわかってしまっているの?
なにも言えないでいると、彼は離れて私の手を握る。


「この手の中の物、見せてごらん?」
「あっ、これは……」


懐中時計を持ったままだ。
彼はためらう私の手を取り、懐中時計を取り上げた。


「見覚えがある時計だ」
「お、同じ物をお持ちだったのでは?」


もうここまでわかってしまっているのだから、素直に『あなたにもらいました』と言えばよかったのかもしれない。

だけど、これをずっと肌身離さず持っていたということは、彼への想いを募らせていたと告白するようで、たまらなく面映ゆい。

私が反論すると、彼は銀のふたを開けた。
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