明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
私の横でいもの皮をむくまつは笑顔だった。
まだまつのようにうまく包丁を使えない私は、いんげんの筋を取りながらおしゃべりを続ける。
最初こそ遠巻きに見ていた女中たちも、私が話しかけたり、どんなことでも仕事を引き受けているうちに、すっかり打ち解けてきたのだ。
「まつ。あやさまはやめてって言ったでしょう? あやでいいの」
「さすがにそれは……」
雇用主の娘と女中という関係が長かったので、戸惑うのは当たり前だ。
だから私も、時折釘をさすだけにしている。
けれども、同じ仕事をしているのに『さま』をつけて呼ばれるのは、なんとなくきまりが悪い。
「あや。ちょっと私の部屋に来て」
いんげんの筋を取り終わった頃、初子さんが呼びに来たので、仕事を中断して彼女に続いた。
「初子さん、なんですか?」
「ねぇ、これ。あやに似合うと思うの」
初子さんが差し出したのは、かわいらしい桜の花の絵がついたつげの櫛。
まだまつのようにうまく包丁を使えない私は、いんげんの筋を取りながらおしゃべりを続ける。
最初こそ遠巻きに見ていた女中たちも、私が話しかけたり、どんなことでも仕事を引き受けているうちに、すっかり打ち解けてきたのだ。
「まつ。あやさまはやめてって言ったでしょう? あやでいいの」
「さすがにそれは……」
雇用主の娘と女中という関係が長かったので、戸惑うのは当たり前だ。
だから私も、時折釘をさすだけにしている。
けれども、同じ仕事をしているのに『さま』をつけて呼ばれるのは、なんとなくきまりが悪い。
「あや。ちょっと私の部屋に来て」
いんげんの筋を取り終わった頃、初子さんが呼びに来たので、仕事を中断して彼女に続いた。
「初子さん、なんですか?」
「ねぇ、これ。あやに似合うと思うの」
初子さんが差し出したのは、かわいらしい桜の花の絵がついたつげの櫛。