明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「あや、ありがとう。無理よ。どうにもならない。もうこの婚姻は確定事項なの。顔をあわせて婚姻について話しあうわけじゃない。旦那さまになる人に、初めて会うという機会なだけ」


初子さんの発言を聞き、私は倒れそうだった。

せっかく彼女が大切な人に巡り合い、青春を謳歌していたというのに、理不尽すぎる。


「きみにより 思ひならひぬ世の中の 人はこれをや恋といふらむ」
「初子さん、それはなに?」


突然すらすらと言葉を紡ぐ彼女に驚き、尋ねる。

「在原業平(ありわらのなりひら)という人が詠んだ和歌よ。この和歌は女性に向けて詠まれたわけではないのだけど……、この気持ちがよくわかるわ」


初子さんは目に涙をいっぱい溜め、唇を噛みしめる。


「どんな和歌なの?」


私には和歌の心得などなく、理解できない。


「そうね……。あなたに思い知らされました。世の中の人は、これを恋というのでしょう」
「初子さん……」
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