明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

その解釈を聞いた瞬間、私の目からも透明の液体が流れだす。


「私、私ね……。公平さんが、好きなの」


頬から顎へと流れ、やがて畳に吸い込まれていく初子さんの涙は、限りなく透明で美しかった。

華族の家に生まれた瞬間から高い身分は保証されるが、家のために嫁ぐということが当たり前だと耳にしたことがある。

初子さんもそうだということ？

子爵家に生まれたというだけで、誰かに恋い焦がれるということがこれほど苦痛を伴うものだとは、おそらく私だけでなく初子さんも知らなかったのだろう。

胸が張り裂けそうに痛み、ふたりで抱きあい涙した。


縁談が決まってから、一度だけ入れ替わり、彼女は周防さんとのひとときを過ごした。

縁談のことを正直に伝えたという初子さんは、もう涙も枯れ果てたのか泣いてはいなかった。


「周防さんはなんて？」
「なにも言わなかったわ。彼だって大人だもの。縁談を止められないことくらい承知してるの」