明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

周防さんならもしかしてなんとかしてくれるのではないかと一縷の望みを抱いていたのに、空振りに終わったようだ。


「恋をした罰が下ったのよ」


吐き捨てるように初子さんが言うので、私は首を振る。


「恋をするのは素敵なことよ。だって初子さん、こんなにきれいになって……。罰なんておかしいじゃない」


せめて、周防さんと出会ったことを後悔してほしくない。
結ばれることはなくても、よき思い出として胸にしまっておいてほしい。


「私……どうしてこの家に生まれてしまったのかしら」


悲しげな表情を浮かべボソリと漏らす初子さんは、カタカタと歯音を立てていた。



そして、どうすることもできないまま、翌週を迎えた。

津田さまが一橋家にやってくるという。

私はそのための準備に走り回っていたが、初子さんは部屋から出てこようとしない。


「あや、料理の準備は済んだの？」
「もうすぐで整います」

「遅い！　あなたのような子を津田さまの目に入れるわけにはいかないわ。さっさと準備して引っ込んでなさい」