明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
初子さんの婚約者に対してこんな気持ちを抱くなんて……と思いはしたが、抑えられるものではなかった。


「ひとつ。あやさんは一時でも女学生だったことはないのか?」


その質問心臓が跳ねる。
やはりあのときのことを言っているのだろう。


「いえ。尋常小学校までしか出ておりません」


もう縁談が進むと決まった今、隠しておく必要もなかったのかもしれない。

だけど、女学校に通っていないのは事実だし、万が一初子さんとの入れ替わりが父の耳に入ってしまったら……逆鱗に触れるのは目に見えている。

そもそもあんなことをしなければ、周防さんと初子さんは恋に落ちることはなかったのだし、心中なんていう事態にもならなかった。

彼女のためにしたとはいえ、その罪悪感も私を止めた。


「そう、か。きみにそっくりな子に会ったことがあってね。人違いだったか」
「……はい。そうかと」

「それでは、これからよろしく頼む。しかし、どうしても嫌になったら俺に言うといい。双方の両親では握り潰されてしまうからね」
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