明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「……俺は、きみを愛せないかもしれない。それでもという覚悟はあるかい?」


そして次に出た言葉に胸がチクリと痛む。
やはり、他に想う人がいるのだろう。

そんな覚悟はしたくなかった。
だけど……彼に愛されるよう努力を重ねることはできるし、愛される可能性がなくなったわけではない。


それに、このままで終わりたくない。

心に想う人に近づける機会が与えられたのに、それを放棄することなんて無理だ。


私は華族の家で育ったけれど、決して恵まれた環境ではなかった。

初子さんのようにきれいな着物も持たなければ、学もない。
でも、だからといってこの先の人生をあきらめるなんていや。


私は小さな覚悟を胸に、うなずいた。


「そうか。それではこの話を進めよう」


『愛せないかもしれない』と言われた直後なのに、密かに心の奥で想いを募らせていた彼と夫婦になれるのだと思うと、胸が弾むのを抑えられない。
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