枯れた華には甘い蜜を
雅がクビの危機に陥った次の日、何故か会社の社長に呼び出されていた。

あぁ。クビ、間に合わなかったか。

内心ドキドキしながら、雅は社長室に向かった。

社長室の前では、社長秘書の女性が雅を待っていた。

雅が来たのを確認すると、社長室のドアを開けてくれた。そして上品に頭を下げると、雅を社長室に押し込んだ。

「やぁ。君が、今井雅さんだね」

「はい」

「ま、とにかく座りなさい。今お茶を用意させてるから」

社長に言われるがまま、雅はふかふかのソファーの上に座る。座った感触で、このソファーが高級品だというのが簡単に想像できた。

「今井さん。何で今日、呼ばれたか理解できてる?」

「何となくでよろしければ」

社長の秘書が用意してくれたお茶を一口飲み、雅は覚悟を決めた。

クビにするなら、早く言ってほしい。そうすれば、午前中で辞めて、家に帰って泣いてやる。

そんなことを雅は考えていた。

しかし、社長の口から出てきた言葉に雅は困惑した。

「あの人、君の上司を本日付でクビにしたから」

自分がクビになると思いきや、クビになったのはいちゃもんつけてきた上司だった。

それを聞いて、雅はただホッとしていた。

しかし、急に上司がクビになるのはどうしたんだろうかと首をかしげる。

雅が不思議がっているのを、社長は感じ取ったのだろう。納得行かないように眉間にシワを寄せ、言いたくなさそうに口を小さく開いた。

“あいつのおかげで、会社の損失があの人のせいだということにたどり着いたんだ”

社長がそう言った瞬間、社長室の中にあるドアが開いた。

開いて、ドアの先から現れた人に、雅は目を疑った。

そこにいたのは、この会社のライバル社である会社の社長だったのだ。

「こいつが、君のピンチを救ったのだ」

社長に紹介されて、ライバル社の社長城之内彰は雅に甘い笑みを浮かべた。
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