俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
ペンキって落ちるのかな……。
大志くんの制服も、ちゃんと綺麗になるのだろうか。
「お待たせ」
トイレから出てきた大志くんの手には先ほどまで着ていたカッターシャツが握られていた。彼はいま、下に着ていた黒のTシャツ姿になっている。
「どうだった?」
「落ちねぇーよな、やっぱ」
「そっか……ごめん」
「だから謝んなって。突然話しかけて驚かせた俺が悪いんだし」
そんなの、かってに驚いた私が悪いだけなのに。
泣きそうになって俯いていると、大志くんの大きな手が頭の上に乗った。
「大丈夫だから。本当に気にすんな」
両方の眉尻を下げて、安心させようとしてくれているのか、優しい表情をしてくれる。
だけど私のなかでそれだけじゃ申し訳が立たない。
「なにかお詫びさせて?」
「え?」
真っ直ぐに大志くんの目をだけを見つめる。そしたら大志くんが目を見張ったあと、目をそらしたから、不思議に思って首を傾げた。
「じゃあさ……」
「ん?」
「文化祭、俺とまわってくんね?」
「えっ?」
思いもよらなかった返答に思わず声が上ずって高く飛んでいった。
そんなことでいいの?
それ、むしろご褒美なんですが……?
「嫌か?」
「そんなわけない……っ」
大志くんの言葉を追い越す勢いで返事をすると、それが可笑しかったのか息をもらすように笑った大志くんがいつものように大きな手で口元を隠した。
ツボに入ったのか、肩を小刻みに揺らして尚も笑い続ける。