俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
大志くんの白いカッターシャツの上。そこに黄色いペンキとともに刷毛がベッタリとくっついていて、ゆっくりと床に落ちていった。
その一連の動きを呆気にとられて見つめた。
周りのクラスメイトたちもそれらに気づいて視線が私たちふたりに注がれていた。
ど、どうしよう……。
「ご、ごめん……っ」
「だ、大丈夫」
嘘だ。そんな顔してないよ。いつもの作り笑いできてない。誰がどう見たって引きつっている。
私は自分のポケットに手を入れてピンク色のハンカチを取り出して、意味ないとわかっていても大志くんのカッターシャツの汚れを拭き取っていく。
「小田さん?大丈夫だって……」
「全然大丈夫じゃないよ」
「……いや、そんなんじゃ落ちねぇーから」
ボソッと小声で言った彼の目が笑っていなくて、私はおとなしく「はい……」と引き下がる。
トイレの水道で「念のため洗ってくる」と言う大志くんに、いてもたってもいられなかったので私も一緒について行くことにした。
女の私が男子トイレの中まで入るわけにはいかないので、黙って扉の前で待つ。ぼうっと廊下の天井のシミを眺めていた。
大志くんについて考えていたときに突然真横から声をかけられたら驚くよ、そりゃ。だからって許されることじゃないけれど。
握りしめていたピンク色のハンカチを見る。これ、実はお父さんからの誕生日プレゼントだったんだよね。乾いてなかったし、ペンキで汚れちゃった。