俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
思わず声を張り上げる。
結衣羽も「え?」と、首をかしげた。
いや、私が悪いのだ。結衣羽の予定も聞かずに「行く」って返事をしてしまった私が。
「なんでもない……」
「そう?」
震える声を頑張って平坦にして、立ち止まったとき、後ろから誰かにぶつかられて、半歩ほど前に身体が出る。
「あ、わり」
声で誰かがわかった。ピキッと頭の中でひび割れたような音が鳴る。
後ろを振り返ると、その人物を睨んだ。
「……絶対わざとでしょ?」
「んなわけないだろ」
背の高い大志くんを見上げる。わざとらしいその真顔に頬を膨らませる。
絶対わざとぶつかって来たよ、この人。
「……恋、か?」
「はあ?」
唐突な問いかけに、しかめっ面になったのが自分でもわかる。
いきなり、なに。
「さっきの……や、なんでもねーよ」
「なによ。気になるじゃん」
口元を大きな手で隠している彼に腕を組んで近づく。すると彼が空いているほうの手で私の顔面を掴むように遠ざける。
「可愛くない顔を近づけてくんな。……心臓に悪い」
「し、失礼すぎ……!」
そりゃ可愛くないことは認めるけれども。そんな言い方なくないか?
デリカシーのかけらもない。まったく酷い。
何気にチカラも強いしさ。
「……ほんと、なんでこんなヤツが女の子からモテるのかわかんない」
「それは俺も不思議」