俺がこんなに好きなのは、お前だけ。


思わず声を張り上げる。
結衣羽も「え?」と、首をかしげた。


いや、私が悪いのだ。結衣羽の予定も聞かずに「行く」って返事をしてしまった私が。



「なんでもない……」

「そう?」



震える声を頑張って平坦にして、立ち止まったとき、後ろから誰かにぶつかられて、半歩ほど前に身体が出る。



「あ、わり」



声で誰かがわかった。ピキッと頭の中でひび割れたような音が鳴る。


後ろを振り返ると、その人物を睨んだ。



「……絶対わざとでしょ?」

「んなわけないだろ」



背の高い大志くんを見上げる。わざとらしいその真顔に頬を膨らませる。


絶対わざとぶつかって来たよ、この人。



「……恋、か?」

「はあ?」



唐突な問いかけに、しかめっ面になったのが自分でもわかる。


いきなり、なに。



「さっきの……や、なんでもねーよ」

「なによ。気になるじゃん」



口元を大きな手で隠している彼に腕を組んで近づく。すると彼が空いているほうの手で私の顔面を掴むように遠ざける。



「可愛くない顔を近づけてくんな。……心臓に悪い」

「し、失礼すぎ……!」



そりゃ可愛くないことは認めるけれども。そんな言い方なくないか?
デリカシーのかけらもない。まったく酷い。


何気にチカラも強いしさ。



「……ほんと、なんでこんなヤツが女の子からモテるのかわかんない」

「それは俺も不思議」



< 42 / 143 >

この作品をシェア

pagetop