俺がこんなに好きなのは、お前だけ。


憎まれ口を叩く私のことを見下ろす彼を一瞬チラ見して視線をそらす。

なんで私、こんなに可愛げがないんだろう。
すぐ怒ったり、イライラしたり、感情の起伏が激しくなっちゃうの?

普段はそんなことないのに。
大志くんの前だと、なぜか自分の感情をストレートに表にだしてしまう。

可愛くない、こんな私。


「ったく……」

「……!?」


ため息まじりの、その声。

大志くんが長い足を大きく前に出し、歩く私の目の前にいきなり飛び出してきて、危うく彼の胸元にダイブしてしまいそうになった。

だけど、それも束の間。大志くんの大きな手が私の両頬を片手でつまむようにして挟んできたのだ。

意図せず自分の唇がタコさんになっているのがわかる。
恥ずかしくて顔から湯気がでそうな勢い。


「なーに不機嫌になってんだよ」

「ひょっと……っ、はなひて……っ」

「むーり。お前が生意気なのが悪い」


また、その顔だ。
笑っている。まるでお気に入りのオモチャで遊ぶ子供みたい。

大きな手が上下に動き、頬を揉みしだかれる。変な顔になっているのがわかる。だって目の前の彼がすごく可笑しそうに笑っているから。

我慢も限界にきて、大志くんの身体を両手で押して無理くり距離をつくった。


「も、もう……っ、最低……っ」

「くっ、ははは!」


口元を手で隠して笑う仕草。その仕草、私は今日何回目だろうか。

知らなかった。大志くんは教室で笑うときは顔を手で隠したりしないから。


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