俺がこんなに好きなのは、お前だけ。


生まれたときから動いているはずの心臓の音。最近やけにその動きについて敏感になってきている。

爆発しそうなほどの衝撃だったり、トクトクと可愛らしい音だったり、今もなぜか忙しなく動いているのがわかる。

教室に一歩足を踏み入れた瞬間から自分の心臓がすこしだけうるさくなった。

今日も完璧な顔で笑っている、あの優等生を見た瞬間から。



「ももか、おはよー」

「おはよう、結衣羽」



声をかけてくれた親友に自然と笑顔になる。
そのまま結衣羽とくだらない話で盛り上がっていると、「小田ー」とクラスメイトの男子に呼ばれ、顔をあげた。



「呼ばれてんぞー」

「え?」



その声の主が指差すほうを見ると、佐藤くんが白い歯を見せて笑っていた。目を見張ると注目されていることに気づいて急に恥ずかしくなる。

身体をかがめて小さくなりながら小走りで廊下にいる佐藤くんのほうへ向かった。



「よっ」

「ど、どうしたの……っ」

「今日の放課後の件、大丈夫かなって。最終確認」

「ああ」



勉強会のことか。すっかり頭から抜けていた。



「大丈夫だよ」

「そっか。放課後迎えにくるから、教室にいて」

「わかった」

「うん、じゃあまたな」



去って行った佐藤くんの背中。ほっと胸をなでおろして教室に戻るとクラスメイトたちの目が、やはり痛かった。


スキャンダラスな話が好きなのは知っている。私も、他人の恋愛話は好きだし。気になるのもわかる。


ただ、佐藤くんと私はほんと、なにもない……はず。

ただ、一緒にカフェに行ったことがあるだけだ。



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