俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
下駄箱に到着し手は離された。自由になった手に寂しさを感じた。大志くんの手は大きくて、私のふにゃふにゃした手とは違って骨がこわばった、でもすごく綺麗な手をしていた。
くつに履き替えてもなお無言のまま、駐輪場に向かう大志くんの後を歩いた。まるでRPGの仲間みたいだななんて考えるほどには頭が冷静になってきた。
「大志くん、さっきはありがと」
「……なにが」
「私のために怒ってくれて」
自転車の鍵を外している大志くんが「別に、礼言われることじゃない」と淡々と述べた。
「お前、ほんとに大丈夫か?」
「え?」
「顔、無理してっぞ。俺の前で無理に笑うな」
べつに、無理なんかしていない。そう、思った瞬間だった。顔が急に引きつったように笑えなくなる。
あれ?私、どうして……。
「……わり、言いすぎた」
「ちが……っ、なんで私、泣いて……っ」
自分の意思と関係なく流れてきた涙に、なにより自分が一番驚いている。
手が震えて、私が自覚していた以上にあの手紙が怖かったのだと今更実感している。
大粒の涙がとめどなく流れる。拭っても、拭っても。
「泣き止まなきゃとか、思わなくていいから。ここには俺とお前だけしかいねぇから」
「……大志くんが優しいとか、明日嵐くるよ」
「るせ」
不器用な手が伸びてくる。頭に置かれて何回かそれが左右に動く。くしゃくちゃになった私のコンプレックでもある癖のある髪の毛。