俺がこんなに好きなのは、お前だけ。


ああ、もう、わかっちゃったよ。大志くん。

この胸のドキドキも、熱を帯びた頬や、離れた手の温度に感じた寂しさの正体。


ごめん、大志くん。私、約束破るね。

私、大志くんのことが好きみたい。好きに、なっちゃったみたいだ。


そう考えたらなにもかもがしっくりくる。得体の知れない感情のなかにいて、モヤモヤしていたのが途端に晴れる。


恋って、こんな感じなんだ……。


心臓のドキドキが全身に広がって、指先までがジンジンと熱い。目の前にいる大志くんに見られていると思うと緊張するし、息することにも気を使う。


そばにいるいま、この瞬間が、たまらなく幸せに感じる。

好きになんかならないって、そう思っていたのに。


結衣羽の言う通りだ。好きって気持ちは自分の意思じゃどうにもならないのだと身をもって知った。あんなに好きな人ができないって悩んでいた。誰かを好きになれないか、ずっと模索していた。


初めての恋。初めて男の子に抱いた優しくて、でもちょっぴり痛くて……温かい気持ち。


私、いま、恋をしている。目の前にいる、彼に。



「乗って」

「え?」

「暗くなってきたし、家まで送る」

「え!?遠いよ!?」

「いいから、乗って」



大志くんが自転車に跨り、後ろをポンと叩いた。私は目を見開いたあと軽く頷くと、遠慮がちに後ろに座った。跨らずに、横を向いたままの状態で。


どこを掴んだらいいかわからずに、大志くんの制服の裾をそっと掴んだ。



「ちゃんと掴まってろって」

「わっ!」



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