恋ってやつを教えてやるよ。
「可愛いんだから隠すなよ!」
「…………へ?」
思っていたのとは違う言葉が落ちてきて、一瞬自分の耳を疑った。
今、可愛いって言わなかった?
え?
嘘だよね?
幻聴?
恐る恐る訝しげにジロを振り返ると、ジロはバツが悪そうに視線を泳がせ、それから真っ直ぐと私を見つめてくる。
頬がほんのり赤い。
「似合ってるじゃん」
────トクン。
え?
今の音、なに?
胸の辺りから、聞き覚えのない変な音が聞こえた気がして、胸に手を当て首を傾げた。
気のせい……?
「いつもそういう格好してりゃいいんだよ」
「う、うるさいな!」
何か、ジロの顔が上手く見れない。
何これ。
「なんか騒がしいと思ったら、ジロか」
「お!祐希くん久しぶりー!ってその髪、どうなってんの?」
リビングから出てきたゆう兄と話し出すジロを置いて、私は呆然としたまま階段を上る。
部屋に戻ると、一花ちゃんがスマホ画面へと向けていた顔を上げた。
「お帰り!何かジロの声が聞こえた気がするんだけど、もしかして来た?」
「……うん」
「美恋ちゃん?」
ドアの前で呆然と立ち尽くしている私の顔を一花ちゃんが心配そうに覗き込んでくる。