恋ってやつを教えてやるよ。
「どうかした?」
「一花ちゃん……。なんか、ジロがどんどんおかしくなってく」
「え?」
「ジロがジロじゃなくなってく……」
前のジロだったら、こんな私を見たら絶対に笑ってた。
“仮装でもしてんのか?”とか言われて、“うるさーい!”って私が怒る。
それが私達だったはず。
それなのに、恋してからというもの、ジロがどんどん変わっていく。
どんどんわからなくなっていく。
「なんか、美恋ちゃん前にもそんな顔したことあったよね」
「……え?」
「ほら。覚えてる?小学校6年生の時、美恋ちゃんがジロとやってた少年野球を辞めるってなった時のこと」
*
私とジロは、小学校2年生の時に地元の少年野球チームに入部した。
休日家で元気を持て余してる私を見かねて、ジロのお母さんがジロと一緒にやらないかって誘ってくれたんだ。
最初は、野球ってのが何かすらよくわかってなかったけど、ジロと一緒に一からルールや技術を学んで行くのは、家で暇な時間を過ごしているよりずっと楽しかった。
最初はグローブでボールをキャッチすることすらできなかった私達だけど、徐々にできることが増えて、できないことは教え合って、同じスピードでゆっくりゆっくり成長していった。