恋ってやつを教えてやるよ。
相談というか、ほぼ愚痴だった気もするけど……。
「それで、美恋ちゃんが野球を辞めた後、すぐ仁郎が辞めてきちゃって、うちのお母さんと大喧嘩になってさ」
「え!?そうだったの!?」
私が辞めたあと、すぐジロが辞めたのは知ってる。
だけど、大喧嘩になっただなんて初耳だ。
確かあの頃、ジロに『何でジロまで辞めちゃったの?』って聞いたら『お前だけが他のことして土日を楽しむなんてずるいだろ!』ってわけわからないことを言われたんだよね。
理由は何であれ、せっかくエースに選ばれたのにもったいないなって思った。
だけど、本当はちょっと嬉しかった。
またジロと対等になれた気がして。
「あの日ね、私、仁郎とお母さんとのやりとりを聞いてたの。あの子、“ここまで頑張ってきたのにもったいない!”って怒るお母さんに“俺は別に野球が楽しくてやってたんじゃない!美恋とやるから楽しかったんだ!”って口答えしてた」
「……っ」
ジロ……。
「私と祐希は、昔からあんな感じだからさ、当時は仁郎と美恋ちゃんの関係がちょっと羨ましかったな」
一花ちゃんは、ニッコリと微笑んでみせると、私の頭を優しくなでてくれる。