恋ってやつを教えてやるよ。

だけど、そんな私達のバランスが決定的に崩れ始めたのは、小学校6年生になったばかりの頃。


始めた当初は、私と変わらなかったジロの身長が急激に伸び始めて、手の大きさや筋肉のつき方も変わってきて、気づいた時にはもう、技術も体力もジロの方がずっと上になっていた。


だけど私は、気づかないふりをしてた。


気づいてしまったら、ジロが遠くに行っちゃう気がしたから。


だけど、それすらできなくなるある出来事が起こる。



『仁郎!頼んだぞ!お前がこのチームのエースだからな!みんなを引っ張ってけよ!』


『はい』



ジロが、うちのチームのエースに選ばれたんだ。


同じ日に入部して、同じ練習をして、同じペースで成長していたはずのジロが、いつの間にか私なんかよりずっと先にいたことがショックで。


私は、その日のうちに野球を辞めてしまった。









「確かあの日も、美恋ちゃん同じ顔で私のところに来て“ジロが私をおいていく!”って泣いてたよね」


「うっ……そ、そうだったっけ……?」



とぼけてはみたものの、実は結構鮮明に覚えてる。


確かあの日、お母さんに辞めたいって言う前に、一花ちゃんに相談に行ったんだ。
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