ブロンドの医者とニートな医者
 
 空港近くのホテルのスイートを取ったアランは、腕をつかんだまま、強引に部屋まで引っ張って行った。

「その……、あの……」

 部屋を楽しんでいる余裕はない。

「相手に危害は加えないでやる。ただ、愛子は俺の言う通り、愛されていればいい」

 ただ立ち尽くす奏を、アランは易々と持ち上げ、ベッドに寝かせる。

「これからは、気が済むまでさせてもらう。愛とはそういうものだ」

「えっ、と、えっと!!」

 奏は、その分厚い胸板を両手で押して、とりあえず距離を取った。

「あの、ごめんってだから、待ってって!!」

「待たない」

 すぐに押し返され、耳元に息を吹き込んでくる。

「その、あの、本気なの??」

 息も途切れ途切れに聞く。

「だとしたらなんだ……、大河原の事を随分気に入ったようだが、あいつは愛子の事なんぞなんとも思ってないぞ」

 全身が固まった。

 それをいいことに、アランはさっそく身体を押し沈めてくる。

「知らないと思っていたのか。そんなはずないだろう……。大河原には釘を刺したし、その上司にも脅しだけはかけておいた」

 今、危害は加えないって……。

「知って……て……」

「知らないふりは、礼儀だろ?」

 どこでそんな礼儀を習ったんだ……。

「ん」

 愛子は、目から流れる涙をそのままに、目を閉じる。

「お前は可愛いんだ……それを自覚しろ……」

 涙はすぐに渇いていき、ただ身体の快楽だけを追い始める。

「一生逃がさない」

 会社も、何もかも、どうどもよくなってくる。

「城で、ただ隣でいればそれでいい」

 城……。

「愛しているんだ」

 イアンに、残りの人生すべて預ける……ということ……。

 会社のことなど、すでにどうでも良くなってしまっている。
 
 あんなにイアンのことなどどうでも良いと思っていたのに、巨大な資産力と強引な力を見せつけられた途端、私はただ、いいなりでもいいと単純に思ってしまったのだった。
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