Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~
少し、思考に取られた私はボーッとしていたのだろう。
「橋詰さん?」
心配そうな顔をして私を見つめる、その距離に驚いて一歩下がる。
「すみません!少しボーッとしてしまって。疲れたみたいです」
そう苦笑いして返すと
「コレと形は似てるから、二着確かめてくれたらいいよ」
そう言って手渡されたのはフレアなスカートで膝下丈のドレスと、タイトなタイプのロングドレスの二着。
どちらも試着して見せれば
「うん、どっちも可愛いし綺麗だ。菜々子はなんでも似合うね」
そう微笑む専務にドギマギして、いつの間にか名前呼びになっていた事に気づかなかった。
ドレスは会社に送って貰う事になり、相当な買い物をしたものの手ぶらのままの私達。
疲れたと言ったので現在はデパート内のカフェで休憩中である。
「菜々子は甘いものは欲しくないの?」
そう問いかける専務は向かいでレモンチーズタルトにブレンドのブラックを飲んでいる。
私はミルクティーのみだ。
「朝ゆっくりしてたのでブランチだったからお腹減ってないですし…」
返事をしながら、ハッとする。
いつの間にか専務が私を名前で呼んでる?
何時からだ?!
びっくりしていると
「何かあった?」
「つかぬ事を言いますが、いつから私を下の名前で呼んでます?」
気づいたら突っ込まずにはいられなかった…。