Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~

白々しいにも程があるが、無駄な足掻きとは窮地に立たされると出るものである。


「何のことですか?専務の仰ることがよく分からないのですが?」

可愛い系女子的に小首を傾げてみせる。
まぁ、私の演技力はたかが知れているけれど…。


「あの夜の記憶はあるんだろう?シラを切るのか?あの時俺が誰か分かってなお、何も言わず去られたのは初めてだった。本気の相手だと思って接していたつもりだったから、俺は目覚めてから何も聞いてない話していない事に愕然としてかなり凹んだよ」

ニッコリと言うその声は穏やかだけれど、その目は今笑っていない。

「俺は出逢いとその後の流れをその日思いっきり間違えた事は理解した。諦めきれなかった朝、出社して驚いたよ。目の前に雰囲気は違えど昨夜の彼女が居たんだから。こんなに近くに居たなんてと、神に見放されていなかったことを感謝したよ」

自嘲気味に笑いながら言う姿は、憂いを帯びた色気たっぷりのイケメン。
何でも様になるとは、羨ましい限り。

「それは、私が神に見放されたんでしょうね…」

思わずげっそりと呟く。

そうそう見つからないと括った私の予測は、脆くもその日のうちに砕けていたとは…。

「君から見たらそうかもしれない。でも見つけて誰か分かればもう、俺に迷いはなかったよ」

だからこうなっているんですね。
私は深いため息をついた…。


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