身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
何か、飲まされた!?
「なに、心配しなくとも毒ではない」
恐々と喉を抑えて見上げる私に、ザイードさんはカップを傾けながら微笑んで見せる。
その微笑みの薄ら寒さに、体の芯から震えが湧き上がった。
「そう、間違えたって貴方に、毒など飲ませる訳がないだろう?」
ザイードさんは、優雅な手つきでカップをコトンとソーサーに置いた。
そうしてその手を、ゆっくりと私に向かって差し伸ばす。
「異端な容姿の黒目の少女が王都で度々目撃されたなら、当然私に報告が上がる。とはいえ、実際に君を見るまでは疑心暗鬼だったのだけどね。……レーナ、いいや、星の女神。よくぞ再び舞い戻ってくれた」
陶酔した瞳が見つめるのは、目の前にいる私じゃない。私を通した、星の女神の虚像だ。
「ち、違います! 私は、女神じゃない!」
「隠さずとも、分かっている。なに、心配せずとも私は愚かな初代王とは違う」
……まるで聞く耳を、持ってくれない!
湧き上がる恐怖が私を後押しした。私は力を振り絞り、その手が触れる直前でソファから立ち上がる。けれど一歩を踏み出したところで膝から力が抜けて、私は床に頽れた。
それでも必死で這いずって、給仕の男性に助けを求めた。
「助け、てっ……」
力の限り、手を伸ばす。