身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「……そう。前国王陛下はね、本物の愚王だ。ここ奥殿には、公式に娶った妃達の他に、攫うように連れてこられた女達がひしめいて暮らしていたそうだよ。前国王陛下が殊更好んで連れてこさせたのが髪と瞳が暗褐色の女達だ」
語る王太子殿下の瞳が悲壮感に翳る。
「愚鈍な王は、己や王家の威光が軽んじられる事を何よりも嫌った。かつて王家を踏みにじった、星の女神を彷彿とさせる外見の女達をいたぶって優越に浸っていたのは有名な話だ。不摂生が祟って、そんなに長く生きなかった事がせめてもの救いかな。そんな祖父の愚かな政権で弱体化した国を立て直し、民心をもう一度ひとつに纏めるのに、父は星の女神の奇跡を望んだ。結局、どんなに願おうと星の女神が父の元に現れる事はなく、父は自らの腕一本で国の立て直しを成し遂げたわけだけど……」
前を見据えた王太子は、触れれば切れそうな、張り詰めた表情で口にした。