身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 そうして荷物台に腰掛け直すと、クレイグス医師が私を見上げた。

「レーナさん、儂のした治療は正しいものなのじゃろうか? ジギタリスはどのように治療にいかすのが良いのじゃ?」

 ……普通なら専門知識の欠片もない私が、経験も実績もある医師に答えられる訳がない。
でもここは、近代薬学の成立以前で……。

 カラカラに渇いた喉で、生唾を呑み込んだ。

「……確かに水腫の治療に、一定の効果は認められるはずです。ただジギタリスは毒性が強いし、自然植物からの抽出ですから、安定した薬効を得るのが難しい。葉っぱだけを加熱乾燥させた粉末を、ほんの少量ずつ様子を診ながら投与するのが一番無難です」

 ジギタリスの成分は今でも繁用されてる。

 だけど私は薬学の専門家じゃない。私の知るジギタリスは、かつて日本で読んだ物語の知識が全て。
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