もっと、めちゃくちゃにして。←ベリーズカフェ限定公開
こんなに暑いのに、どうして長袖のパーカを着ているのかと、不思議そうに最後に質問をした龍也くん。
答えずにいると、『ごめんね』と言ってあたしの手首を掴んで袖を捲られてしまった。
手にある傷痕を見て、龍也くんは目を細めたんだ。
『今も…続いてるの?』
「毎日…でも、もう慣れました。」
『…慣れちゃ、ダメだよ』
え?
と、顔を上げると龍也くんの瞳から一筋の涙が零れ落ちたんだ…
この時、人の痛みに涙を流す人がいるんだ…って、正直に思った。
あたしには、人を…自分の娘を痛みつけて笑って喜ぶお母さんの姿しか見たことがなかったからだ。
テレビさえも見させてもらえなくて、ニュースなんて何も知らなくて。
あたしの位置情報を知るために与えられたスマホで初めて、世間をたくさん知ったのがつい最近だ。
龍也くんと出会ったのは、あたしが中学二年生で、龍也くんは高校二年生の頃だった。
そんな龍也くんは今、大学二回生…
そしてあたしは、出会った頃の龍也くんと同じ高校二年生だ。
やっと、あの頃の龍也くんに追いついたのに…
その差が埋まることなんてなくて…。
ずっと、この差を埋めたくて必死で頑張ったけど…
出会って一年で付き合って、半年で突然別れてしまった。
それも、突然連絡がつかなくなってだ。
やっとの思いで繋がった電話の声の龍也くんは、あたしの知る龍也くんの声ではなかった。