龍使いの歌姫 ~幼龍の章~
翌日の夜。

レインはティアが入っている籠の前でジッとしている。

まるで、一瞬の隙も逃さないというように。

「そんなに見つめてると、穴が空いちゃうよ?」

「え?そうなんですか?!」

レオンに言われ、レインはバッと視線を反らす。その様子がおかしくて、レオンは声をあげて笑う。

「あはははっ!冗談だよ。見つめたくらいじゃ穴は空かない」

「師匠、またからかったんですか?」

ムッと顔をしかめるレインに、レオンは「ごめん、ごめん」と平謝りする。

レインは素直だったため、レオンが悪戯心で冗談を言うと、いつも信じてしまい、その後嘘だと分かるとこうして顔をしかめる。

(でも、さすがに『僕は実は女なんだ』って冗談を信じるとは思わなかったけどね)

そうなんですか!と目を輝かせて、じゃあ一緒にお風呂入れますね何て言われた時には、こっちが狼狽えた。

この国では成人前の少女に手を出してはいけないという法律はないが、別方面から苦情が出る気がしたのだ。

そもそも、レオンはまともな大人なので、レインをどうこうしようという気は全くないが。

「まだかなー!まだかなー!」

首を右へ左へ傾げながら、レインはにこにこしている。本当に楽しみで仕方ないのだと思うと、微笑ましい気持ちになる。

だが、問題はティアが生まれた後の竜の話。それを、レインはどう受け止めるだろうか?

レオンはレインに、生きる術と一緒に、あることを言い続けてきた。

それは―。

「師匠!」

「!どうかした?」

物思いにふけっていたレオンは、レインの声でハッとすると、笑って振り返る。

すると、卵にヒビが入っていた。
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